最高気温
25











夏の猛威も過ぎて、少し肌に感じる熱も和らいだこの季節。
部屋の温度計を見れば、針は23℃を差している。今日の最高気温は確か23℃って言っていたから、まさにその通りな感じで、
全然最近当たらない天気予報もたまにはヤルじゃん、なんて。

「行ってきまーす」

外に出ると、そんなに陽射しが強くない事で夏も過ぎようとしてるのを痛感する。
夏よりは冬が好きだけど、なんとなく・・・なんか、寂しい気がして。
そんな、ちょっと切ない気分になるのが秋なんだなーとか年に似合わない事を思いながら駅に向かう道を歩く。
今日は、久しぶりのデート。
普段部活で忙しい彼・河村隆がやっと空けてくれた土曜の午後は見事に晴れてくれて、でも夏も過ぎ去った感のある
この気温は尚更デート向きで、天候さえも私達を応援してくれている気がした。

今日は、特にどこへ行こうという約束もしていない。
ただ学校が終わったら帰って、すぐに着替えて駅前に集合。それからの事は会ってから気分で決めよう。
プランも何も無いデートは実は結構面白くて、時々どうしたらいいかわからなくて途方に暮れたりはするけど、
それはそれでホンワカ楽しめちゃったりするのが私達。
今日は、どうしようかなぁ。

ちゃん」

まだ駅に着いていないのに、私を呼ぶ声。
振り返ると、やっぱり隆だった。
駅まではまだ角を曲がらないと辿り着かない少しの距離。

「隆、どうしたの?なんでこっちから来るの?」

私が不思議そうに聞くと、隆は少し恥ずかしそうに自分の頭を軽く撫でながら言った。

「せっかく久しぶりのデートだから、家に迎えに行ってびっくりさせようと思ったんだけど、その・・・出たばっかだって
家族の人が言ってたから・・・急いで追いかけてきたんだ」

恥ずかしがる事じゃないのに、少し頬を染めてバツが悪そうな顔をする。
なんだか、そんな隆の顔を見てるだけで私はもぅ満たされてしまって・・・。なんでだろう?普段なかなか外で会えないからかな?
もうどこにも行かなくても、一緒に居られればそれだけでいいやって気分になってくる。
せっかく、昨日の晩ファッションショーやったのにね。
私は顎に伝ってきた隆の汗を指の腹で拭う。

「ねぇ、隆?」
「なんだい?」

汗を拭った私の指をさりげなく拭こうとしながらの返事は私の耳に優しく響く。

「どこか行こうかすごく考えてたんだけど、なんか隆と居れればもういいや。」

そう言葉に出して伝えると、隆はなぜか困った顔をする。
ただでさえ普段から困り眉なのに、ますます困り眉になってしまうのだ。そりゃぁもうすごい困った顔になってしまう。

「そんな・・・」
「なんでそんなに困った顔になってるの?どっか行きたい所、あった?」

そう言いながら、二人で止めていた足を動かしてとりあえず駅に向かって歩く。
いつの間にか車道側を歩いてる隆は、なんかちょっと大人っぽくてムカツクよ。

「いや・・・ちゃんと久しぶりでどこかに行こうって話だったし・・・それにさ、その・・・」
「?なに?」

隆は困り眉はそのままに少し頬をまた染めて。

ちゃん、かわいいから。どこか、行こうよ」

思いがけないセリフ。
純情な隆の、全くもって思いがけない不器用ながらこっぱずかしいセリフ・・・。

ちゃん」
「・・・なに?」
「顔、赤いよ」

本日の最高気温、河村隆と、二人の間のみ・・・25℃、くらい。

















終わり。







20100329:校正