夏休み
早くも、夏休みはあと一週間となっていて、思い返してみれば何もしていなかった。
毎日家でダラダラ過ごして、行っても田舎に帰った位。
何かに打ち込む事も、友達と遊ぶ事も、恋に集中する事も、宿題も。
何ひとつ、満足いくような事はしていない。
「ーあんたいつまで寝てるの!!いい加減起きて買い物に行ってきてちょうだい!」
最早なんの為に起こされるのかわからない。そんな気にさせる母親の声がドアの向こうから聞こえてきた。
・・・しょうがない、起きるか。
「もぅ起きてるよー」
そう返事だけして、パジャマ代わりのジャージのままリビングへと移動した。
「、今日はここに書いてあるのお願いね」
朝御飯を食べている最中に母親にそう言われて渡された買い物リストが書かれた紙。
そこに書かれた物を見ると・・・
「お母さん、これ、いなげやじゃ全部揃わないよ・・・」
「わかってるわよ。駅前まで行ってちょうだい」
笑顔で、まだ発していない私の抗議は却下された。
「あ、ついでにお花もお願いね」
「・・・・・・」
「行ってきまーす」
駅前とはいえ、自転車で15分。
着替えるのも面倒臭くて、ジャージはそのまま。上のTシャツだけ変えて出かける事にした。
買い物して帰るだけだしー。
自転車に跨って、駅に向かう。
それにしても、改めて考えると・・・スッピン・ジャージ・ビーサン。すごい格好だな。
最早女を捨てていると言っても過言じゃないかもしれない。こんな私でも、恋はしているのに。
こんな格好の所を見られたら、それこそ死にたくなるだろうな。なら、ちゃんとすればいいのに。
なんて、自転車を漕ぎながら一人自分にツッコミを入れる。
「この、向日葵下さい」
「ありがとうございます〜」
他の買い物は済ませて、最後の締めに花。
なんでもいいって言われたら、そこは向日葵を選ぶデショ、夏だし。
「ご自宅用ですか?」
「はい」
財布からお金を取り出して、待機。お店の人は手際良く向日葵とカスミソウを纏め上げていく。
「すいません、この向日葵頂けますか?」
「あ、いらっしゃいませ〜。少々お待ち下さい」
向日葵、人気あるんだ。
すいませんね、ちょっと多めなせいで、私時間かかっちゃってて。
「お先お待ちのお客様、お待たせしました。1050円です」
「あ、はいー」
「・・・?」
いきなり呼ばれて、後ろに並んでた人を振り返ると、そこに居たのはタカさんで。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スッピンにジャージにビーサンだし・・・。
だから死にたくなるって思ったじゃんよー!!
「、家のおつかい?」
後悔先に立たずな考えでグルグルしてる私にはまるで気付かずに、タカさんは至ってマイペース。
・・・くそぅ。
「うん・・・タカさんも?」
「お店に飾る花を買いに、ね。」
優しく笑うタカさんが、好きだ。
こんな格好でも、恋心はどこか別の所で稼動するらしい。
私のあと一週間の夏休み・・・あと一週間しか無いけど、何かしらの思い出が・・・急に欲しくなってしまった。
こんな所で、タカさんに会ってしまったから。
「タカさんさ、夏休み、どっか行った?」
「俺?全然だよ。部活があったし、部活が無い日は店の手伝いがあったからね」
「じゃあ、じゃあさ、もしどこか空いてる日あったら・・・夏休み最後にどっか・・・プールとか行かない?」
どうか、どうか顔が赤くなってませんように・・・!!
こんなイケてない格好に、追い討ちをかけないで・・・せめて、サラッと誘える私でありますように。
「そうだな・・・いいよ。部活もやっと夏休みだし、店も一日位なら休ませてもらえそうだし」
「やったーっ!!」
ついつい両手をあげて、万歳。
だって、嬉しいじゃんっ!嬉しくないっ!?
「あ、あのーお客様・・・」
あ・・・店員さんの存在をすっかり忘れていた事に気づく。
「「あ、す、すいませんっ!!」」
慌てて口から出た言葉がタカさんと被った。
いいね、息が合ってるじゃんか?
「じゃあ、とりあえず帰るね」
「うん。あ、、夜電話するよ」
「わかったーありがとう!じゃあねー」
タカさんに手を振って、小躍りしながら向日葵の花束を抱えてその場から去った。
どうしようっタカさんとプールだってさっ!!
・・・・・・はっ!!プールとかつい言っちゃったけど、この腹どうしようっ!!
おわり
20100329:校正