「タカさんっ!!花火したい花火っ!!」



いきなりな私の思いつきでまさに巻き込まれる形となった可哀相なダーリン、タカさん、こと河村隆は部活帰りの疲れた体で
コンビニでGETした花火セットを片手に、河原に向かってどんどん歩く私の後ろをのほほんと付いて来る。

ちゃん、元気だねぇ」

のほほんとした歩調と同じような口調が後ろから投げかけられた。
いきなり付き合わされたにも関わらず、タカさんの口調は怒っているふうでもない。
・・・私だったら、切れそうだよな・・・なんて。
だって、本当にいきなりだったのだ。
コンビニで視界に花火セットが入ってきて、見た瞬間やりたくなってしまったのだ、花火を。
タカさんと。
・・・どうしても。

わがままだってのは充分自分でわかっていて、だからこそ自分がタカさんの立場だったら切れるなぁ〜とか思っちゃうんだけどさ・・・
わかってても、この衝動は止められなかったのだ。
この、甘酸っぱい青春に憧れる乙女心はジコチューだとわかっていても、止められない。
・・・ただ。
ただ、止められないし止める気も無いんだけれど・・・毎日の厳しい部活で疲れてる優しいタカさんを
引きずり回す事に対する罪悪感は無い訳では無くて・・・。
タカさんは優しいから、我儘な<彼女>のお願いを断る事は出来ない。
それは、もしかして<彼女>じゃなくても同じかもしれない・・・同じように、断れないで結局誰か女子とこうしてどこかで花火なんか・・・なんても、思ってみたり。

タカさん、優しいからねー・・・。

「タカさん、この辺でいいかなー?」
「うん、いいんじゃないかな」

川原に到着するなり花火セットのパッケージを開ける。
バケツもライターも、途中の100均で買った。準備は万全なんだいっ!!

「タカさんっ!何からやるよっ!?」
























2本一緒に火を付けたり、火のついた花火で空中に絵を描いたり。
子供の頃駄目って言われた事、全部やってやった。
うん、ちょっとはスッキリした・・・かな?
私は日本国民恒例の最後のシメである線香花火に火を付けてしゃがみこんだ。
その横にタカさんもしゃがみ込む。

ちゃん」
「なーんだい?」
「・・・どうしたの?」

別に。

「別に?なんでそんな事言うの?」

タカさんはチリチリ言う線香花火を見つめたまま優しく微笑んだ。

「だって、なんか変だったし・・・。ねぇ、ちゃん、俺なんかしたかな?」
「いや、タカさんは何も・・・何もしてないよ」
「俺は・・・?じゃあ、他の人が何かしたの?」
「・・・何も。何も無いよ・・・」
「・・・・・・」

頑なな態度に出るとテコでも動かない。
それを知ってるから、タカさんは黙ってしまった・・・と、思ってたんだけど。
今日は予想外に食い下がってきた。

ちゃん、なんでもないならそんな態度取らないよね?言わないなら帰らないよ?」

それは脅しのつもりですか?脅しになってませんが・・・
でも、なんだか・・・心配してくれてる証拠に思えて、なんだか嬉しい。

「帰らせてくれないの?タカさんのえっち。」
「えぇぇぇぇっ!?い、いや、違うっ!!いや、違わないけどちが・・・いや、違う・・」
「ぶっ」

なんでこんなに可愛いんだろうね、この人は。
・・・そんな可愛い所、私だけが知ってる事だったらいいんだけどなぁ。
こんな独占欲は、嫌だなぁ・・・私、可愛く無いなぁ・・・。

「タカさん、もし今私と付き合って無かったら、あの子と付き合ってた?」
「・・・は?」
「私が告るのが早かったってだけで、もしあの子が私より早く告ってたら、あの子と付き合ってたかなぁ?」
「・・・見てたの?」
「うん、たまたま。」

今日の昼休み、音楽室で。
先生のお使いを頼まれて行った音楽準備室で、聞こえちゃったんだよね、可愛い年下の女の子からの告白。
タカさんの魅力に参ってるのは私だけじゃないんだ、って見せ付けられた気がして。そしたら、段々今度は、私よりあの子が早く告ってたら、
今のタカさんのオツキアイ相手はあの子だったんじゃ・・・って。
不安になっちゃったよ。
ヤベ、ちょっと泣きそうになっちゃった。
鼻にツンとしたものを感じて、ごまかすように顔を上げようとした所に、タカさんの手のひらが見えた。


ポン、ポン。


「?」



タカさんの手が私の頭をポンポンする。

「不安になっちゃったんだね?ごめんね。」
「いや、タカさんのせいじゃな・・」
「あのね、」

言葉を遮られる。
いつも相手の言う事は言い終えても待ってる程聞き上手なのに。

「俺、ちゃんに好きって言ってもらえて、嬉しかったんだ。あの時付き合ってって言われて、うんって言っただけだけど、
俺、ちゃんが好きだったから」
「・・・初耳・・・」
「うん、初めて言っちゃった」

照れてるし・・・っていうか・・・。

「だから、あの子がちゃんより早く告白してくれても、断ってたよ」

嬉しいよ・・・タカさんがこんな事言った事無いし。
でも・・・

「タカさん・・・」
「ん?」
「・・・私が好きだったって、もう少し早く言ってよ・・・」
「いや、だって・・・ねぇ?」

そう照れながら、私の手からもうとっくに終わった線香花火を取って、新しいのを渡してくる。
くそ、可愛いな・・・

この可愛さは私だけのもの。
私だけの。
へへ。




おわり。



20100329:校正