コントラス















夏は日差しが強すぎて・・・校舎の壁の"白”も手伝って、目に映るのはただひたすら、光と影のコントラスト。
そんな夏は苦手で、光にも影にもなれない灰色はどこへ行けばいーんだ、とか思ってしまったりもする。
小さい頃によく耳にした<夏の代表の五月蝿いの>って感じの蝉も、最近は見なくなった気がした。
そうなると、彼等はどこへ行くんだろう。なんて考えながら、私は、いつものように上履きから外履きに
履き替えて、正門に向かう道をボーっと歩いている。
夏が自己主張しまくっているこの時期は、なにもする気が起きなくて・・・。
夏が頑張れば頑張る程、私の気力は反比例するように下降していく。

・・・帰るのすら、辛い。
動くのが辛い。
なんかもう、全てがどうでもいいやーと思えるこの暑さ。


あ、ベンチ空いてる。

いつもはテニス部のギャラリーで埋め尽くされてるフェンス周りも、さすがに人がまばらだった。
もちろんフェンス横のベンチも、空いてる。

一昨日は39℃、昨日も38℃まで気温が上がったって言ってた。
この二日間で消費した私の体力は、いかばかりだろう。
体力と一緒に気力も奪われて奪われて、一向に持ち直す気配はない。

・・・休んでいこう。自宅への道は、まだ長い。


そう思って腰掛ける、滅多に空かないベンチ。
ここからはテニスコートが一望出来る。


みんなこのクソ暑いのによくやるね。
見てるだけでこっちが暑くなってくる程、テニス部の連中はやたら走り回っていて。

ほんと、よくやるよ・・・。

座ったはいいが、目の前で繰り広げられる暑苦しい光景に・・・ものの30秒ももたないって気になってきて。
------------帰ろう。
さっさと帰って、家で涼もう。そう思い立って重い腰を上げる。
涼しい所に入れば、少しは白と黒以外の色も見えてくるかもしれない。

「あれ?さん帰るの?」

いきなり後ろから掛けられた声。

「見に来るなんて、めずらしいよね?せっかくだしもう少し見ていけばいいのに」

私の目の前に回りこんでくる前から声でわかてたけどね。
こんな優しいトーンの声の人なんて、滅多にいない。
クラスメートの、河村隆。
テニスウェアを着てる事以外、普段と何も変わらない、河村君。
でも、光と影が強すぎて最早白と黒の世界にしか見えてない私の視界に、彼は目に優しい薄茶の髪を従えて、
いきなりカラーで現われた。

「・・・暑いんだもん」

そう言いつつ、なんで彼が、彼だけがカラーに見えるのかその理由を探す。






・・・あぁ、そうか。






河村君は、水と引き連れていた。
正確には、水浴びをした直後だったんだ。
こんなに暑い中で、なんか涼しげで。
髪にまだ残る水滴がキラキラ光って、キレイで・・・。

「確かに。熱中症にならないように早く帰った方がいいかもね」

自分はさておいてそんな事を言う河村君。

「ターカさーん」
「あ、はーい」

部活仲間に呼ばれて振り返った瞬間に落ちる水滴。
飛んだ一粒が、私の頬に当たった。

「じゃぁ、さん気をつけて帰ってね」
「あ、うん」

頬に当たった水滴を指で拭いながら、夏だと思った。
夏だから、こんなに自分の顔も熱いんだと。
そう誤魔化しつつ、それでも水を従えた優しい薄茶の色は私の中残ってしまった。
























20100329:校正