+ブン殴る+
「は?何ソレ」
『いや、だからその・・・』
毎週土曜日、私とタカさんは試合が無い日はなるべく会うようにしてた。
普段、学校で会ってはいるけど部活があるのもあって、なかなかゆっくり出来ないから。
もちろん、今度の土曜もそのつもりで。しかも、たまたま付き合って三ヶ月の記念日だった。
それが・・・
『本当ごめん!!』
「・・・わかったよ・・・」
急に部活のみんなでボーリングに行く事になったらしく、タカさんはそっちに行くと
言い出したのだった。
まぁね、男友達も大事だよね・・・そう、自分に言い聞かせて。
あーあ、記念日とかこだわっちゃうの、私だけなのかなぁ・・・そんな事を思いつつも、周りが
盛り上がってる中「行けない」って言い出せないタカさんを思い浮かべたら、苦笑いしか出なくて。
そんな所も好きだから参っちゃうなぁ・・・なんて思ってみたり。
「いいよ、と遊ぶし、タカさんも楽しんできなよ!」
『あ・・・ちゃんマネージャーだから、きっと・・・』
「・・・そっか、そっち行くか」
『ご、ごめん!本当ごめん!!』
放っておけばいつまでも謝り続けそうなタカさんに気にしないでいいよって告げて、電話を切った。
・・・今度の土曜、何しよう・・・。
♪チャ〜ララ〜ララ〜♪
と、その時鳴り始めたケータイ。
着信音はCMとちょっと前のドラマで使われてた、シルヴィ・バルタンの曲・・・画面を見ると、さっきまで
少し話題に出てた親友で男テニマネのだった。
「ほーい」
『あ、?私ー。今平気?』
「うん。どしたの?」
は、マネでもあり、乾の彼女でもあった。
それにしても、タイムリーだなぁ。
『あのさー今度の土曜聞いた?』
「うん、さっき。ボーリングだって?」
『そうなんだよーごめんよ』
「いや、が謝る事じゃないさー」
フォローの電話か?なんか返ってすまないなぁ、なんて・・・。
『あのさ、その日私と遊ばない?』
「え?だってボーリング行くんでしょ?」
そんなの益々悪いよ!だって、ボーリング行けば乾と居られるじゃんか!!
『いーのいーの、いつも会ってんだし』
そんな調子で押し切られ、に甘える形になってしまった。
でも・・・女同士で遊ぶのも久しぶりだし・・・嬉しいかも。
土曜日、快晴。
駅前で待ち合わせして、まずはお茶した・・・っていっても、お金無いしマック。
「なんか乾と部活のみんなに悪かったなーってちっと思っちゃった」
「なんでよー?いいんだって、たまにはさ。タカさん、なんか言ってた?」
「と遊ぶって言ったら、楽しんでおいでって。なんか嬉しそうだったよ」
そんな話をして、次はウインドウショッピング。
買わないのに色々見てたら、いつの間にか夕方になっていた。
「次どうするー?」
「うーん・・・」
なんとなく、帰る気にもなれなくて。
でも、いくつか案は浮かぶけどどれも行動に移す気にはならなかった。
「ねぇ、」
「ん?」
「ボーリング、見に行こうか?」
「え、いや・・・」
がムフフな顔つきになる。
なんか、ちょっとその顔エロいよ?
「でも、お邪魔じゃんか」
「だから、陰からこっそり覗くんじゃん!」
「覗きっすか!?」
「どうよっ!?」
「いいっスね!!」
満場一致、ボーリング覗き見大会〜!!
・・・結局、彼氏が気になるのはしょうがないのだ、お互いに。
「・・・居たっ!!」
「どこどこ!?」
まさにコソコソという感じでボーリング場を歩き、すぐに見つけた、なんとも五月蝿くて目立つ集団。
「ぐはーここまで声聞こえるよ」
「元気すぎ。・・・ねぇ、今日も乾のペナルティありなの?」
「ありなんじゃない?」
しれっと言うね。
もう慣れたその感じがやけに頼もしいよ、・・・。
目線をボーリング中のみんなに戻すと、丁度タカさんが球を投げた所だった。ラケット持ってないから
ちょっと迫力には欠けるけど、そのパワーは変わらない。
ドゴォン!っていったよ・・・大丈夫なのかね。
「ねぇ、?」
「ん?」
あぁ、タカさんかっこいいなぁ・・・
「タカさん、どう?」
「・・・何が?」
に向き直る。
・・・見なきゃ良かった・・・目がランランと輝いてる・・・!!
「喧嘩とかー愚痴とかーないの?」
「ないよ」
タカさん優しいもーん、と笑うと、ちょっと悔しそうな顔をされた。
「ちっ」
「なんだソレ!!」
と、その時だった。
「ねぇねぇ、カウンターってどこにあるかわかるかな?」
二十代位の三人組の男。
そこそこ落ち着いてそうな年っぽい割には慣れ慣れしい感じで、なんだか不快感が沸く。
「あぁ、そこの角を曲がった所に・・・」
「連れてってよ」
「ハ?」
連れてってもなにも、本当に曲がってすぐ・・・そう思ったのに、思った瞬間三人組の内の
一人に腕を掴まれた。
「じゃ、行こうか」
「ちょっ・・・待っ・・・て!!」
「な、ちょっと離しなさいよ!!!」
「このっ・・・!離せ!一人でカウンター位行けっ!!」
あんまり騒ぐとみんなにバレル・・・!
そんな、どうしようも無い事を考えた。
でも、みんなが居る場所より少し奥まった所、しかも受付からは死角に居るせいで、いざとなったら助けも
来ないだろう事にも気付いてしまった。
見ると、も腕を取られている。
「いいから来いよって・・・!」
「ザケンナ!!」
相手が一人位なら何とかなるかもしれない。
・・・そう思ったのは、間違いだった。
テーブルに押し付けられた。
そして、そっちに一瞬気を取られている内に
「・・・っ!!」
胸を、鷲掴みにされた。
殴ってやる!!そう思った。
非力な自分だけど、ただ犯られるよりはマシだ。
構えた拳。
一発だけでも、入れてやる。
そうして、突き出した私の拳は相手に届く事は無かった。
でも、届いた別の拳。
私の頭の横から飛び出した手。
その手は、真っ直ぐに私の目の前の男の顔面に突き刺さっていた。
「てめ・・・ざけんなよ!後から来て女横取りかよっ」
の方に居た残り2人の内1人が、こっちに向かって言い放つ。
すると、背中から響く、迫力のある大好きな声。
「大人しく消えた方がいいよ。これ以上手加減してあげられる自信、無いから」
「それとも、現役の学生相手、しかもこれだけの人数相手に頑張るつもりかな・・・?勝てる確立は
限りなく0%に近いな」
いつも間にか背後に揃っていた、みんな・・・そして・・・
2人は、すっかり伸びている男を抱えて消えた。
「・・・大丈夫?ちゃん・・・」
「・・・た、たかしゃん・・・っ!!」
タカさんに後ろから抱きしめられた途端、やっと体中の力が抜ける。
来ないと思ってたのに。
聞こえないと、思ってたのに。
「、生きてるか?」
「・・・なんとか・・・貞治、ありがとう・・・」
親友の無事な声。
「・・・っ!!うあーんっ!!」
なんだか一気に緊張が解けて、半泣きで、タカさんに抱きついた。
「で、なんであんな事になってたのかな?」
「ま、まぁまぁ乾先輩、落ち着いて・・・」
ボーリング場から出て、ファミレスに部活のみんなとと私で落ち着こうという事になった。
落ち着くもなにも、そこに待ってたのは尋問で・・・。
緊迫した空気に、少しでも和ませようとする桃の努力はむなしかった。
「いや、覗いてたら、いつの間にか・・・」
「ふーん・・・」
「「ごめんなさい・・・」」
どうしようもなくて、とりあえず謝る。
すると、それまで無口だったタカさんが口を開いた。
「ちゃん、俺がなにに怒ってるか、わかってるかい?」
「・・・あんな事になってたから」
そう、素直に思いつく事を言うと、タカさんはため息を吐いた。
違うの・・・?
「あぁいう事があるのは、しょうがないと思う。それは、2人とも悪くないよ。俺が怒ってるのはさ
・・・・・・ちゃん、戦おうとしたでしょ?」
「え、あ・・・ハイ」
確かに殴ろうとしてました・・・。
「なんで俺を呼ばないの?あんな近くに居たのに、なんで自分で片を付けようとしたの?
俺、そんなに頼りない?」
「・・・・・・・」
「ちゃん?」
頼りないわけないじゃん・・・こんなに頼りになる人いないのに。
ただ、たださ・・・
「迷惑かけちゃうって、それだけ思ってた・・・」
だって、下手したら活動停止になっちゃうかもしれないし・・・。
そう言うと、タカさん初めみんながため息を吐いた。
そして、次に口を開いたのは、手塚。
「、あんなに明らかに相手が悪いのに、俺達が罰を受けるわけが無いだろう・・・」
「いや、そうかもしれないけどさ・・・」
「ま、じゃそこまで頭回らないって!しょうがないよ手塚」
「コラ、英二!二人共傷付いてるんだからもう少し労わったらどうなんだ!」
軽く言ったお菊の言葉を大石が諌める。
でも、おかげで少し場の空気が和んだ・・・乾とタカさんの雰囲気も、和らいだ気がする。
「タカさん、ごめん・・・ありがとう」
目を見てそう言うと、やっとタカさんは「いつでも、呼んで欲しい」と言って笑った。
みんなが気を使ってくれて、タカさんと2人きりの帰り道。
私は手は繋いだまま、少し後ろを歩いている。
「タカさん」
「なんだい?」
「かっこよかったよ」
不謹慎だけど、本当に、かっこよかったんだ。
「・・・無事でよかったよ」
「・・・タカさん?」
「ん?」
少し小走りになって、タカさんの真横につく。
「ちょっと無事じゃなかったよ?」
「・・・・・・」
胸、触られたもん。痛かったし。
「ごめん、もう少し早く俺が気付いてたら・・・」
「そこはタカさんのせいじゃないよ。それ言ったら私だってもっと早く大きい声出してればって思うじゃん」
そんな話がしたいんじゃないのになぁ・・・。
私の胸から消えない、掴まれた時の痛み。体にも、心にも。
「タカさん!さっきみたいに手、グーにして」
「ん?」
タカさんは私の言う通りに、繋いでた手を放して拳を握る。
私はその手をとって、掴まれた胸にポスッと、叩かせた。
「・・・わぁっ!!な、な、何してんのっ!?」
「いや、なんとなく」
「なんとなくって・・・」
タカさんは慌ててその手を引っ込める。
真っ赤になって、うろたえるその姿がやたらかわいい・・・さっきまであんなにかっこよかったのにね。
「いやな感触も、タカさんのパンチで消えるのだ」
不思議だね、全部タカさんのおかげで解決しちゃうんだよ?
タカさんは私の言葉を聞いて、ハッとした表情をして・・・今度は手を繋ぐのじゃなく、肩を抱いてきた。
「今度は呼んでね。すぐ、飛んでいくから」
「うん!タカさん大好きだよ!!」
そんな、記念日。
おわり
本編の続き。
ありがちネタやってみたかった。