目の前に、無造作に前後に振られている大きな手がある。
普段はラケットか鉛筆が握られている手。
少し豆が出来ていて、骨ばっていて・・・でも、あんなにパワーのある試合をするのにその手が優しい事を私は知っている。




・・・いっその事飛びついてしまいたい・・・!!









つなぎたい








いいなぁ、タカさんの手。
最近の私はタカさんの手ばかり見ている。
きっかけは、顔を反らした事だった。
理由は分からない。優しいけど芯はシッカリしてる所も好きだし、試合中の殊更元気な姿なんかかっこいいと思う。でも、それはどれも
タカさんを素敵だって思う形容詞の一つでしかなくて・・・まだ正直、トキメいてはいるものの・・・「なんで」タカさんか?って聞かれたら、
ここが好きだからっ!って一発で形作って言えるモノは何一つない。
他の誰でもなく、タカさんがとにかく気になり始めてしまって、意識しすぎて顔が見れなくなった。そうして目線を下げた先にあったのが、
タカさんの手だった。
すごい力を持ってるけど、お寿司を握ったり繊細な動きもする、手。
・・・好き・・・。



ちゃん?」
「なんだい?タカさん」



顔を見られたくない。目が合ったら、絶対赤くなる自信があるから。
部活中、ちょっと手首を捻ったタカさんを従えて部室に向かっている・・・タカさんは私の横を歩いていて、普通に会話はしているけど私は
タカさんの手ばかり見つめている。



「あのさー・・・俺、ちゃんに何かしたかな?」
「・・・へ?」



いや、何も・・・私が勝手に盛り上がっちゃってるだけで・・・。
そのせいで、目が合わせられないだけで・・・。



「最近、さ、避けられてるかなー・・・なんて」
「いや、それは無い」
「いや、でもさ、その・・・目、合わせないし・・・嫌われたのかなーと・・・」



嫌・・・ッ?!違う!逆だから目が・・・!!

なんて、ついつい顔を上げてしまって・・・バッチリと、しっかりと。
合ってしまった・・・目が。






ボッ






きっと漫画だったら効果音が付く程、自分でもわかる程、一気に顔が赤くなった。



「・・・・・・あ」
「・・・あ、ちゃん?」
「いや、なんでも・・・」



なんでもない訳がない。
目が合った瞬間赤面するなんて、赤面するなんて、赤面するなんて!!



「どうしたの?熱でもあるの、かな?」



・・・この男が鈍すぎる事実を私は忘れていたよ・・・。
アハハン、なんて自嘲気味に思っていたら、憧れまくっていたタカさんの手が、私のおでこに・・・。



「少し熱い、かな・・・?」



ギャーーーーーーッ!!!!!!



「た、たかしゃん・・・!!」
「え?・・・・・・あ!ご、ごめんっ!!」



益々赤くなった上に口をパクパクしてる私を見て、焦ってタカさんは手を外す。
途端に離れて行った温もりに、少し寂しさを感じて・・・。



「ごめん、俺なんかが触っちゃって・・・嫌だったよね?」



そう呟かれたセリフに切なさを感じて、そして許せなくて。
私は決死の思いで顔を上げて、タカさんの離れて行った、今までずっと<つないで歩けたら・・・>と夢見ていた手を握り締めた。



「<なんか>ってなに?」
「え?え?」
「<俺なんか>ってなに?」



途端に真剣になった私に、タカさんはちょっと驚きながら答えた。



「いや・・・俺なんかが触ったらちゃん、嫌かなって・・・」
「<俺なんか>じゃないでしょ。タカさんはいつも何に対しても紳士的で優しくて、強くて!もっと自信持ちなよ!!」
「え、あ、うん・・・あ、ありがとう・・・」
「避けたのは事実だけど、嫌いだからじゃないよ。・・・タカさんがあまりにかっこいいから、好きだからまともに見れなかっただけ・・・」
「ありが・・・・・・へっ!?」



鳩が豆鉄砲くらったような顔って、きっとこれだな、と思った。
予想外だったんだろう私の、この思いがけない告白がちゃんと、タカさんに届けばいい・・・。

一瞬の沈黙。
もう、言わないよ?ここまで言ったんだからタカさん、ちゃんと考えてよ。
そう願って、せめてタカさんが口を開くまでは私も口を開かないでおこう、と。



「その・・・あの・・・それって、俺の事好き・・・っていう事?」
「・・・他にどういう意味があるのか、あったら聞いてみたいもんですね・・・」
「あ、うん。そうだね・・・ごめん。」
「・・・そのごめん、は応えられないって、ことかな?」



胸がキュンってした。少女マンガだよ。
漫画でしかない表現だと思ってたよ・・・。
フラレタ?そう思った瞬間だった。握りっぱなしだったタカさんの手に力が入って、私の手を握り返して・・・



「違う。俺、ちゃんが好きだから」



私の目を見据えてそう言ってくれた。
私は、終始赤面しっぱなしで・・・あぁ、でも・・・



「私もタカさん大好きっ!!」



幸せーーーーーーっ!!!!
















部活帰り、タカさんと一緒に帰る約束をした。
あの憧れた手に堂々と触れられる日が来るなんて、まるで夢みたいで。
あんなに横で揺れる手に触れて、手をつなぎたいって思ってた日々が夢だったみたいに、私達は照れながら手をつないで帰った。







end




タカさんと手つないで帰れたら、死んでもいい2004。