さーてと、行くかー
なんて、ちょっとやる気なさげに軽く走りだす。
捕まえる相手が海堂だったらそれこそやる気まんまんになっちゃうんだけどね・・・
その気になる相手の海堂薫は、警察仲間だった。今は私の斜め前をやっぱり少しかったるそうに走っている。
・・・あ。
ちょっと、いい考え浮かんじゃったかもしんない。



そのまま私は無言で、海堂の後を走った。
そう、海堂がどこに行くのかが知りたくて・・・後を付いて行く事に決めたのだった。
・・・軽くストーカーですかね?















「おい」
「なんだい、海堂君?」
「なんだいじゃねー。なんでさっきから付いて来るんだ」

海堂の後ろをひたすら走り始めて、ようやく他の警察の皆がバラけはじめていた。
まぁ、そのおかげで私が追跡してるのがバレバレになってしまった訳ですが。
海堂は、一個上の私にタメ口をきく。
最初は敬語だったんだけど・・・どうやら、海堂の中で敬語を使うべき先輩とは判断されなかったらしい。
・・・なめられたもんだ、私も。

「嫌だなぁ、付いてなんかいないよ、ハッハッハ」

そう答えた途端激しくなった私を見る海堂の目つき。
ハイ、スイマセン・・・。

「いや、海堂がどこに向かうのかがちょっと気になったりして・・・」
「・・・阿呆か」
「阿呆じゃないもん・・・」

私を阿呆だって言うなら、ここまで行動派な私を目の当たりにしてなんで惚れられてるのかも、とか思っちゃわない
海堂、あんたも阿呆だ。・・・と言ってやりたい。言わないけど。

「フン・・・勝手にしろ」
「はい、かってにさせて頂きます」

なんだかお許しが出たようなので、やっぱりそのまま付いていく。
しばらく一緒に走っていると、海堂は階段を下に下がった。
ここから下には、確か・・・そう思っている内に、さっさと海堂は<理科室>へと入っていった。
・・・理科室?なんか予想外かも・・・。

「おい」
「なに?」
「まだ付いてくんのか?」
「うん」

ちょっと嫌そうに海堂は言って、そのまま奥の方へ行った。

「ねえ、海堂?」
「なんだ」

ここにきて、初めて私から話しかけた。
今まで話しかけなかったのは、海堂の行く先を邪魔したくなかったから。今なら、話してもいいと思った。

「なんで理科室なの?」
「・・・なんとなく」
「ふーん」
「・・・なんだよ」

別にぃ〜と言いながら、私は理科室の棚に飾られた色んな標本に目を向ける。
もちろん、中にはグロテスクなのもあり・・・うぇぇぇ。


「なんじゃらほい?」
「なんで付いてきたんだ?」
「なんでだと思うー?」

あんたのその鈍感な頭でも、さすがにここまで来ればわかるんじゃないの?普通後なんて付いて来ないでしょ。

「・・・たまたま行きたい所が理科室だったとか」
「ぶっ・・・」

ば、馬鹿じゃないの・・・!
そう叫びたいけど、ちょっとだけ我慢して。

「本当にそう思ってるの?」
「・・・俺が、好きか?」



・・・いきなりだな、オイ。
普通、もう少し前置きがあってもいいでしょうに・・・
もしかして、どうでもいいからこんなアッサリ言ってくれちゃったとか・・・?

「そう。海堂が好きだよ・・・だから、海堂が気になって後付いてきた。」
「そうか」
「・・・迷惑?」
「イヤ」

可も無く不可も無い、そんな終わりの見えてこない会話。
ねぇ海堂?あんた、今何考えてるのさ?
そう思った時、海堂が体の向きを変えた。今さっき入ってきた理科室の入り口に向かってゆっくり歩き出す。
行くのか・・・フラレタって事かな・・・?
ため息が零れた。フラレタっていう確実な言葉も無いままに帰って行こうとする海堂は、まさに自己中っていうか・・・
本当にマイペースで・・・私はすごく負けた気分になっていた。
くそ・・・振られっぱなしじゃ洒落んならん!!
そう思うと同時に、小走りにその場を離れる。

「海堂!!」

私の呼び声に海堂がこっちを振り向いた。
そのおでこ目掛け、軽くはたく。

「な・・・」
「聞いてくれてありがとう!でも、もう少しちゃんと断ってよね!!」

海堂に向かってそう告げると、私はニヤッと笑って理科室を出た。
ちょっとはスッキリしたかも。
そう思って、でも、誰か捕まえない事には気晴らしも出来ない!と思っていた。

「振ってなんかねーぞ!」

・・・は?
何、今の・・・?海堂の声によく似てたけど・・・海堂は大声出したりなんかしない・・・と思う。
それでも、後ろを恐る恐る振り返ると、海堂は私を見ていた。

「海堂?」
「振ってねー。」
「振ってないって・・・今、返事も無しに教室出て行こうとしてたじゃんか!!」
「それは・・・・・・チッ、俺が迷惑じゃないって思ってる時点で気付け」

ちょっと赤い顔をしながら、吐き捨てる。
いや、可愛いんだけど・・・でも今はそんな場合じゃなくて。

「はぁっ!?何よそれ!訳わかんないっつーの!そこまでわかるわけないじゃん!!」
「好きなら気付け」

なんて傍若無人、なんて我儘、なんてマイペース!!
そして、気付けば内容も気にせず二人で大声で怒鳴りあっていたのだった。

「気付けるか!!大体、鈍感な海堂にそこまで言われたくないわよ!!」
「あのー・・・」
「うるせー女・・・」
「なによその言い草!!そのうるせー女が好きなのはどこの誰ですか!!?」
「別に好きなんて言ってねー」
「おーい・・・」
「振ってないって同じ事じゃないのよ!!じゃあ何?!やっぱ振ったって事な訳!?」




「・・・いい加減にしろ!!海堂!!!」




「うひっ」
「・・・っす」



いきなり聞こえた怒鳴り声に、恐る恐る声がした方を見ると・・・
そこには大石&テニス部警察&一部捕まえられた泥棒の皆さん。
もしかして・・・?!

「おまえらなぁ、普通そういう話はもっと静かにするもんだろっ!」

あー・・・やっぱ聞かれてたのね・・・最悪・・・まさに、最悪・・・。

「だって大石、海堂がさ・・・」
「振ってねー」
「まだ言うか!!」

大石は、両腕を振り上げたかと思うと、私と海堂の頭に大して痛くないゲンコツを食らわせてくれた。

「ごめんなさい」
「スイマセン」
「わかればいい。続きは、帰りにでもしてくれ」
「「はい」」

帰り・・・には、お互い冷静になっていて、ちゃんと話が出来るんだろうか?
まぁ、でも・・・暗雲が立ち込めている訳でもなさそうな・・・。
ちょっとだけ、本当にちょっとだけいつもは寂しくなる帰りの道のりが楽しみになった。
それにしても・・・テニス部の皆に速攻知れ渡るんだろうなぁ・・・いや、もう知られたか。






海堂   ED   END
20100330:ちょっと改訂