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「あっつい・・・喉乾いた・・」
「俺も・・・」
「でもお茶買うお金無い・・・」
「茶をくだちゃい!」
「・・・ダビデ、罰として奢りです」
「ごめんなさい、俺もお金ありません・・・」
放課後の教室。
日直でまだ残っていた私と天根は、教室内の蒸し暑さに日誌も書かずにウダウダしていた。
極限に喉が渇いている。しかし、小遣い前で心底お金が無かった。
「早く書いて帰るしか無いのか・・・」
今だ真っ白な日誌を見ながら呟くも。
「書いて帰るったって、今から急いでも家に着くのは30分以上先だな」
「・・・そうだね・・・」
30分か・・・耐えられそうも無いな・・・でも、じゃあどうしようか。財布の中身、6円とかなんだよね・・・と呟きながら視線を泳がせた先に見えたのは、
クラスメートが捨て忘れて机の上に置きっぱなしにしていった、一個の空き缶。
・・・・・・空き缶・・・!
「・・・ねぇ、ダビデ」
「あ〜?」
私はその空き缶を指差しながら、目の前に座る天根の肩を掴んだ。
「空き缶!回収BOXに10個入れれば100円になるじゃんっ!!」
我が校には、「空き缶回収BOX」なる逆自販機が設置されている。
飲み終えた空き缶を専用口に入れると、1つにつき10円が返金されるという画期的なシステムだ。
「校内の空き缶、集めるカン?」
「5点。それそれ!」
二人で視線を合わせ、握手を交わす。
「最低10個。最悪でも半分こ出来れば上出来だよね!!」
「わかった。俺上の階見てくる」
そういって、親指を立てる。
私が親指を立て返すと、天根はニッと笑って小走りで出て行った。
黙ってればかっこいいのに、なんてちょっと思ってみたりして。
2年の階を大体回って、見つかったのは3個。
思ってたより少ない・・・ちょっと焦りながら、1年の階も回ってみる事にする。
そのまま階段を降りるべく歩くと、踊り場でダビデに合流出来た。
「おう、」
「3個しか無かった〜」
「上の階、4個。あと3個か・・・」
たった30円が届かなくて奔走する2年二人、しかも1本買っても半分こ・・・なんだか貧乏って哀しい。
二人揃って「あと3個が無かったらどうしよう」的な緊張感に苛まれながら、階段を下っていく。と、手すりに1つ、ちょこんと置かれている空き缶を見つけた。
「あ、ラッキー!」
これであと二つじゃん!いける!!って言いながら手を伸ばすと、斜め後ろからヌッと伸びてきた腕に、空き缶を掻っ攫われた。
「・・俺の方が手でかいし。」
「え、あ、うん」
まるで当たり前みたいにその腕の中の缶の群れに納まっていく缶を眺める。いつも馬鹿騒ぎしかしてないから余り意識してないけど、こういう時に
(あ、そっか、ダビデって男だった)
って思う。
この間までランドセル背負ってた気もするのに、なんだかいつの間にか・・・どんどん私の知らない所で勝手に【男】になっていってしまうみたいで、
前を歩く背中を見ていたら、ちょっと取り残されていく様で寂しい気が・・・したようなしないような。しないような。
「あれ?なに空き缶抱えてるんですか〜?」
斜め後ろから聞こえてきた、無駄に元気という印象の声に振り向くと、今まさに渇望しているTHE・缶をその手に持っている剣ちゃんとバネさんが、居た。
お ぉ ぉ ぉ ・・・!!丁度残り二個がそこにっ!!
「「その缶ちょーーーーだいっ!!」」
考える事は同じらしく、天根と二人ハモりながら手を差し出していた。
「・・・は?」
「まだ飲み終わってない。」
不思議そうな顔をしている二人に早く飲め!と天根と二人で急かす。
きっと私は乙女には程遠い顔をしていたのだろう・・・バネさんが引いていた。いいんだ!もうこの渇きは限界なんだ!
「なんだかよくわからんが・・・ほい」
そう言ってバネさんに渡された缶を手にしながら、天根と私は熱い握手を交わした。
「やっと・・・やっと・・・!!」
「100円分集めるのにこんなに苦労するとは・・・、俺ら頑張ったよな・・・!」
「頑張った!頑張ったよー!!」
大量の缶を抱きかかえながらお互いの健闘を称えあう私達。
そんな私達を見ながら、剣ちゃんが飲み終えた缶を差し出しつつ口を開いた。
「もしかして、缶集めてジュース一個買うの・・・?」
「え、うん」
「・・・二人で一個?」
「もちろん。我等はその一つの目的の為に今まで走り回ってたんだからね!」
胸を張ってそう答えた私に、バネさんが哀しそうな・・・いや、哀れむような目をしながら言った。
「、ジュース一個位俺が奢ってやろうか?」
「・・・・・・・・いらんわーーーーー!!!」
「うおっ!」
いきなり叫んだ私に、剣ちゃんとバネさんが仰け反った。
「い、いらないってお前・・・」
「いりませんよ!何のために今まで頑張ってきたと思ってんですか!!苦労して10個見つけたのに、そんな簡単に奢るとか言わないで下さい!!」
「、よく言った!!」
なぜか半泣きになっている天根と固い握手を交わし、空き缶をくれたバネさんと剣ちゃんにお礼を言いながら天根と【空き缶回収BOX】のある2階へと上がっていく。
「・・・バネさん」
「ん?」
「なんであの二人、あんな気が合うのに付き合ってないんですか?」
「・・・同じ位バカだからお互い恋愛感情まで進んでねーんじゃね?・・・付き合ってるようなもんだけどな」
残された二人がそんな会話をしてるとは露知らず。
天根と分け合ったジュースは苦労の味がして大変美味しゅうございました。
おわり