いつもボーっとしがちな私は、周りの友達からいつも「世話がやける」とか言われる。
隣の席の海堂君は話した事は余りないけれど、しっかりしてる感じで・・・
少し怖いけれど、あんな風になれたらなぁって憧れていた。
でも、ある日海堂君は朝から困った顔をしていて。
「どうしたの?」
「今日は・・・水曜か?」
「うん」
どうやら曜日を間違えていたらしく、その日私は教科書を海堂君と一緒に使った。
「・・・悪ぃ」
「いいよー気にしないで☆」
海堂君は以外と抜けてる所があるのかなって思った。
と同時に、もっと知りたいって思ったこの気持ち。
憧れは、恋に変わった。
+BLACK or WHITE?+
気にはなっていても、例えとなりの席でも、基本的にしっかりしている海堂君はあれから忘れ物もせず、
私は挨拶以外に話すきっかけも掴めないまま。
何か・・・何かきっかけが欲しいっ!
せめてもう少し仲良くなれるきっかけが・・・!!
「あ・・・」
フ・・・フデバコ忘れたーっ!!
一時間目は自習、二時間目は体育だったから今まで全然気付かなかった・・・。
次の三時間目はノートを取った中から試験問題が出るノート筆記最重要の歴史。
勇んで開けた私のカバンの中にいつものフデバコの姿は無かった。
(ど、どうしよう・・・!もう先生来てるし!)
「」
(ま、丸暗記・・・はどう考えても無理だよな・・・)
「、オイ」
「・・・ハイッ!?よ、呼んだ?」
「呼んだ。」
「ご、ごめん!どうしたの?」
「どうした」
「えっ・・・あ、なんかフデバコ忘れちゃったみたいで」
危ない・・・今一瞬自分が何してたか忘れてた・・・落ち着け自分!!
とか思いつつ、それきり黙った海堂君を見ると、何やら自分のフデバコをゴソゴソして・・・って、
もしかして!?
「これ使え」
そう言って差し出してくれたのは黒地に所々赤の入ったシャーペン。
「え・・・借りていいの?」
私の問いに海堂君は無言で私の机にシャーペンを置いた。
「使わなくなったら返せばいい。」
「あ、ありがとう・・・!」
すごく遠回しな言い方。
今日一日借りていていいって事だよね?言い回しがすごく海堂君らしくて、なんだか笑えてくる。
授業が始まって、ノートを早速取る。
海堂君のシャーペンを使ってるっていうだけで、いつもより字が綺麗な気がする。
私の鼓動も、早い気がする・・・私しか見ないノートなのに。
「」
「ん、んん?」
「消しゴム、必要な時は言え」
「え、いいの?」
「ああ。」
そ、そんなに甘えてしまっていいのかしら?!
・
それにしても、人の慣れというのは罪なもので。
五時間目に入る頃には、これはもしかしてもしかしなくても”キッカケ”なのではっ!?という考えが頭の中を
めぐりめぐっていた。
しかし・・・
ここから話を広げるにもどう広げればいいのかわからないし・・・・・・せいぜいお礼言う位しか・・・!!
大体、また海堂君が忘れ物するのを狙ってたのに私が忘れてどうするんだっつーの・・・。
イヤ、待ってたら以外ともう席替えした後で接点無かったかもしれないし・・・結果としては良かったのか?
キーンコーンカーンコーン
色々考えている内に授業終了の合図・・・これであと一時間分になってしまった・・・。
そして結局、何の話の種も見つからないまま六時間目も終了。
あぁ・・・返さないとだなー・・・
と、残念がっていると海堂君が隣で立つ気配。
「か、海堂君っ」
「ん?・・・あぁ」
「シャーペン・・・」
私がオロオロしながら海堂君を見上げる。
「部活行く。めんどくせーから明日でいい」
そう言って、さっさと教室を出て行ってしまった。
(−・・・シャーペン・・・持ってていいんですか・・・)
バックを持って出て行ってしまった海堂君の後ろ姿を見送る。
明日まで持ってていいんだよね?・・・・・・って事は、作戦考えられるって事だよね・・・なんて、
現金な女だな、私って。
海堂君に借りたままのシャーペンを胸ポケットに入れて、帰宅部の私は返る準備を始める。
「帰るわーまた明日ねー」
友達に告げて一人校舎への外へ。
・・・あ、今日はいい日だしちょっとテニスコート見てから帰ろうかな・・・ギャラリーももしかしたら少なくて、
ちゃんと海堂君がテニスしてる所を覗けるかもしれない。
私がまともにテニスコートを覗くのは初めて。だって、いつもギャラリーが多すぎてちゃんと海堂君の姿を
確認する事だってままならない感じだったから。
しかし、期待むなしくコートの周りはいつも通り女の子だらけで、
私はジャンプするとやっと海堂君のバンダナが少し見える位にしか覗けない。
そうそうラッキーが続く訳ないか・・・帰ろうかな・・・帰って明日の為に作戦を練ろう!
ジャンプしてもするだけ無駄だって気が付いて、帰ろうと方向を変えたその瞬間・・・
「わっ!」
「えっ!?」
目の前に広がっていた青学ジャージに、私は突撃してしまった。
「ご、ごめんなさいっっ!!」
「、大丈夫か???」
聞き慣れた声を聞いて、鼻の頭を押さえつつ顔を上げる。
「桃か」
「相変わらずお前ボケてんなぁ」
去年同じクラスだった、海堂君と同じく青学テニス部レギュラーの桃城武。お調子者だけど、
どこか兄貴分的な所があってみんなに好かれている。
私も嫌いじゃないよ、楽しいし。
「そんな事ないよっ普通だし!」
失礼しちゃうね、みんなが言う程ボケてないっつーの!
言いながら、ドンッと左胸を叩いた。
アレ?
叩いた先に違和感を感じてそこへ目を移す。
「ないっ!?」
左胸ポケにさしたハズのシャーペンが・・・ない。
頭が真っ白って、この事を言うんだと思った。
慌てて足元を見るけど・・・ない。
周辺を見ても、ない。
「すいません、ちょっ・・・すいません!」
目の前の女子をかき分けて、足元・・・ない。
ど、どうしよう・・・
「?オイ、っ!!」
肩を掴まれて見上げると、桃が変な顔でこっちを見てた。
「どうしたんだよ?」
「胸ポケに、ペン、さしてて・・・ないのですよ・・・」
「ペン?」
「うん・・・借り物なの・・・」
桃は頭を少し掻くと、笑顔で私に言った。
「どんなんだ?」
「黒と赤のシャーペン・・・」
「よしっ!は自分が通った校舎内探せ。この辺はオレが見てやっからよ」
「え、でも部活・・・」
折角の申し出だけど、私の不始末だし・・・第一、通りすがりの桃に迷惑はかけられない。
でも、桃はニカっと笑った。
「そんな死にそうな顔してんだ、大方好きな奴に借りでもしたんだろ?気にすんなって!ホラ、行った行った!
その代わり、見つけたらそいつが誰か教えろよ?」
そう言って肩を押し出され・・・、私は校舎に向かって走った。
全部見た。
歩いた道、全部。
教室も見て、ゴミ箱も漁って、職員室も落とし物がなかったか訪ねたけど、やっぱり無かった。
どうしよう・・・
折角貸してくれたのに。折角、接点が出来たと思ったのに・・・。
きっと、借りられてラッキー!とか思ってたから、罰が下ったんだ・・・。
昇降口から出て、再びテニスコートへ向かう。
桃も巻き込んで・・・謝らないと・・・手塚先輩厳しいって聞いたし・・・。
校舎脇を抜けてテニスコートへ出ると、そこに立って居たのは桃ではなく。
「海堂君・・・」
「??」
とっくに帰ったハズの私を見て、海堂君は訝しげにこっちを見ている。
「あ、あの・・・」
「?」
海堂君はこっちを見てるだけ。
それなのに、私はどうしたらいいのかわからなくなってしまった。シャーペンといえど、借り物を無くしてしまった。
ちゃんと言わなきゃいけないのに・・・。
「おい、どうした?」
海堂君が歩いて来る。
歩いて来る姿が、少し、ぼやけた。
「・・・・・・?」
そして、私の膝が、立っている事を止めた。
強烈な自己嫌悪。
なんで気付かなかったの?なんで胸ポケなんかに入れたの?!
なんで・・・
気付くと、頭の上に何かの感触。
顔を上げると、海堂君がいつの間にか私の頭の上に手を置いていた。
「大丈夫か?・・・ホラ、立て」
頭から下ろされた手がそのまま私の前に出される。
オロオロしつつ、私は・・・その手を取った。
立って、ちゃんと謝らなきゃ・・・
「ー!」
立ち上がりかけた瞬間、叫ぶ声。
首だけ回すと、桃が駆け寄って来ていた。
「オイ、これじゃねー?!落としたっつーシャーペン!」
桃のその手には、借りて無くしたシャーペン。
立ち上がりかけた私はまた、そのまま尻餅をついて座り込んでしまった。
「・・・落とした?」
「・・・ってこら海堂!マムシっ!!何お前弱ったに手ぇ出してんだ!その手を離せ!!」
桃の声に、未だに手を繋いでたのに気付く。
私ってばなんつー大胆なっ!!・・・でも振り払えない・・・。
そんな私をよそに、横で海堂君はフシューっと一つため息をついて繋いでいた手を離し、一回だけポンっと
頭をこづいた。
「オメーじゃねーんだ、んなマネはしねー」
「あぁっ!?んだとコラァッ!」
「ヤンのか」
「上等だっ!」
「う、うあっ!ちょっと待ってよ2人共っ!!」
いつの間にか一触即発になっている2人をなだめる。
「も、桃、あったの・・・?」
「ん?あ、そうそう」
これだろ?と差し出してくれたのは、あのシャーペンに間違い無かった。
「ありがとう〜〜〜〜っ!!ど、どこにあったのっ!?」
また半泣きになった私を見て桃はまたニカっと笑って、「植え込みの中」と答えた。
「そんな所に・・・」
「ギャラリーが蹴りでもしたんだろうな、フェンス脇の植え込みん所だったし」
「本当にありがとう!!」
「いいって事ヨ!」
今度は、落とした事をちゃんと海堂君に言わなきゃ・・・・・・もうすっかりバレてると思うけど。
「海堂君、ごめんね、実は借りたこのペン、落としちゃってて・・・」
「・・・聞いた」
「えっ!これ、マムシのだったの?」
「う、うん・・・」
びっくりした顔で、桃は私と海堂君を見比べた。
と、一気にニヤついた表情になる。
「フーン・・・ま、良かったんじゃん見つかってよ!オレは部活に戻ろーっと」
くるっと私達に背を向けてコートに向かう。
「ありがとうっ!頑張ってね!!」
最後にもう一度お礼を。桃がいなかったら、見つかってない。
桃はもう一度こっちを振り向いて叫んだ。
「!好きな奴に借りたんならちゃんとしまっとけよ!」
ヤ、ヤラレターーーーーーーーーーーっ!!!
ど、どどどどうしようっっ・・・
「・・・・・・」
海堂君、何も言わないよ・・・
沈黙に耐えられなくて海堂君をコソッと見上げたけど、桃が走っていった方向をひたすら睨んでいる。
に、逃げよう。
まだ伝えるつもりじゃなかった。「逃げる」のは不本意でしかないけど、今はむしろ「逃げたい」!
よしっ!!・・・と、その前にシャーペン返そう・・・また落としかねないし・・・。
「かっ、海堂君っ!!」
「・・・あぁ」
「こ、これっ!!」
「?」
緊張で手が・・・手が震えてる・・・。
「ま、また落としたら困るし、今の内に返す!あ、ありがとうございましたっ!!」
「・・・・・・」
ペンを差し出した格好でそのまま静止する事10秒。
なんでノーリアクションなの〜〜〜っ!?
ど、どうしよう・・・突っ返して帰った方がいいのかな・・・
その時、海堂君がユラ〜っと動いた・・・と思ったら、私の手を優しく押し返した・・・。
「?」
「めんどくせーから明日でいい」
「えっ・・・」
なんで?桃が言い捨てていった事、聞いて無かったの?
「だ、だって・・・」
「」
「はい・・・」
「明日、部活ミーティングだけですぐ帰れる。終わるの待ってろ」
「う、うえっ?!」
ちゃんとした返事を私がするのを待たずに、海堂君はそのままコートに行ってしまった。
な、なんでだってば・・・?聞いてたんでしょ・・・?
期待・・・しちゃうじゃん、こんなんじゃ・・・。
私は、顔を赤くしたまま再び私の所に来てしまったシャーペンを握りしめ、しばらくそこにぼーっと突っ立っていた。
つづく