ぬいぐるみを捨てた次の日、どうやら燃えるゴミの日だったらしく、学校から帰ったら部屋のゴミ箱は綺麗に片づけられていた。
あぁ・・・本当に俺の恋は終わったんだなって思えて・・・少しまた泣きそうになった。









tear's rain<3>











「なぁ桃、お前またダブルスやるつもりってあんのか?」
「どうだろうなー・・・まぁやってもいいけどよ、俺としてはダブルスよ・・・・・・・りシングルの方が性に合ってる気がすっけどな」

荒井と廊下でくっちゃべってる最中、ちゃんが目の前を通った。
でも俺は・・・知り合う前みたいに、声もかけない。
・・・そんな日がもうこれで何日目だろう。
姿を見かけるだけでついつい会話が止まりそうになる自分を思い返すと・・・少し笑えるよな。
吹っ切るなんて、正直まだ先の話だと思っちまう・・・気にしないフリしてるだけだ。出会う前の日常に、必至こいて戻ろうと・・・してるだけ。
あの話し合いの直後は、何回か目が合ってその度にちゃんは何か言いたそうな表情をしていたけど・・・
俺は残念ながら普通に話せる程そんなに強くなくて、シカトするしか出来なかった。
今でも、そう・・・話したら未練タラタラの気持ちがクビをもたげそうで、まだ無理だ。
少しでも話しちまったら・・・それこそ、三流ドラマみたいに<なんで俺じゃ駄目なんだ>、とか言っちまいそうで・・・怖い。




午後の部活。
いつもの様に軽く体を慣らしていると、部長代理の大石先輩にレギュラー全員が呼ばれた。

「よし、全員揃ったな?!じゃぁ名前呼ぶから第一コートから順番に入っていってくれ。」
「「「「「「「「「「「うぃーす」」」」」」」」」」」」

どうやら試合形式をするらしく、俺は第二コート、相手は・・・タカさんだった。

「タカさん、よろしくっす!」
「あぁ、俺の方こそだよ」

やっぱり俺はノーマルタカさんの方が落ち着く(そらそうだ)。
審判は二年生メインで俺ントコは荒井・・・なんか俺、こいつとよく接点が出来るんだよなぁー。
試合形式って言う名前だけの練習試合が始まって、最初はタカさんのパワーに負けねーぞ!!とか思ってたんだが・・・
なんだか今日のタカさんやけに強くねーかっ!?
公式試合でも何球かに一球の割合で出る全てのタイミングがバッチリ合った時の絶好球がやたら返ってくる。
・・・なんでだ・・・?
苦戦も苦戦、超苦戦。気が付けばいつの間にか差は広がってやがった。

「さぁ、モモちゃん!カモ〜ン!!」

くそっ、サービスエース取ってやろうじゃねーのっ!!
自分的には絶好のタイミングで空に向かって突き上げたラケットを振り下ろす。
と、その時。
球を相手コートに叩き付けようと腕を振り下ろしたその瞬間、コートフェンスの向こうに目の端で捕らえたのは・・・

タカさんの彼女さんと、ちゃんだった。

そっか、だからタカさん今日こんなにつえぇーんだ?
そして、それっきり俺は意識を失ったんだった。











「あ、桃城君!?」

目が覚めたら、目の前に心底惚れてる女が居た。

「ここ・・・?」

ちょっと霞む視界でなんとか判別出来たのは、ちゃんの泣きそうな顔と自分がベットに居るって事。
あれ、俺何やってたんだっけか・・・?

「桃城君、大丈夫?」
「俺・・・?」
「タカさんとの試合中、頭にタカさんの打球受けて倒れたんだよ・・・ここ、保健室」

あー・・・そういえば試合してたんだっけか・・・?しかもボロ負けで。
なんとなく思い出してきた頭のちょっとコブになってるらしい痛い部分をさすりながら、上半身を起こす。

「試合、ボロ負けな上に倒れる所なんて見られて俺ってマジかっこわりぃよなー・・・」

本当に。
よりによってちゃんの真ん前でくらうなんて、ピエロもいい所だ。

「格好いいとか格好悪いとか、そういう問題じゃなくて!!大丈夫なの?!」
「あ、あぁ・・・コブになってるから平気だと・・・」
「よ、良かったー・・・」

・・・怒られた。
・・・怒られた上に安心されちまったよ・・・この後に及んで嬉しいとか思っちまう。

「あ、あのさ、今・・・何時?」
「6時だよ」
「6時!?俺そんなに気絶してたんかよっ!?」

3時間は寝てたっつー・・・・・・・・・?

「あ、ちゃん、俺さ、もう大丈夫だから・・・」
「・・・・・・」
「ほら、ピンピンしてるしさ・・・帰って、いいから・・・」

3時間も寝てたっつー事は、3時間もちゃんは付き添ってたっつー事で・・・。
くそっ、期待しちまうじゃねーかよ・・・わかってんのに。
わかってるから、シカトしてたっつーのに・・・。
俺はちゃんにとって友達で、でも俺は好きで、好きで・・・縋っちまいたい位好きなのにどうにもならねーから・・・
シカトしてたっつーのに・・・。

「あ、あのさ・・・話したい事、あるんだよね」
「・・・・・・」

友達に戻りたい・・・ってか?
俺だって、一緒に居たのは楽しかった・・・けど、それは無理なんだよ・・・。

「ずっと、機会伺ってたんだけど、話せなくて・・・だからっ・・・今、いいかな・・・?」
「・・・わりぃ、俺部活戻らないと・・・」

俺の言葉にショックを受けたような顔したちゃん。
ごめん・・・ごめんな、でも今はまだ、無理なんだ。
俺は頭の痛みを我慢して、保健室のベットを降りる。ちゃんの顔を見ないように、いつもより少しだけ、足早に。
すぐ下に置いてあった上履きに足突っ込んで、ちゃんと履けて無いまま保健室のドアに手をついた。

「桃が・・・好き・・・みたい」

ふいに聞こえた、夢にまで見たセリフ・・・幻聴か?
俺の都合のいいように、そう聞こえた気がした。
幻聴だと思って、手を掛けたまま一瞬止まったままのドアを開けようとした。

「桃城が好きなの!!」

もう一度聞こえた幻聴。
・・・幻聴は二回は聞こえねー・・・よな?
恐る恐る振り返ると、ちゃんは・・・真っ赤な顔して、目に涙いっぱい溜めて俺を睨んでた。
俺は・・・とりあえず呆気に取られるしか出来なくて。

「な、んでシカトすんのよっ・・・!ひ、人が必至こいて・・・っは、初めて告ったって言う、の、に・・・!!」

半分泣きながら、それでも俺を睨んで伝えてくる。
・・・マジか・・・?

「なんか・・・言いなさいよぉっ・・・好きな人が出来たんな、ら・・・そう言っていいから・・・今さっら・・言われても・・・
困るんなら・・・そう言っていいか、ら・・・なんか・・・い・・って・・・」

ドアに掛けた手を離して、ゆっくりちゃんに近づいて・・・本人の了承も得ずに俺は、抱きしめた。

「なんで・・・」
「え?」
「俺が好きだって・・・なんで・・・?」

夢なんじゃないだろうか・・・?
あの日以来まともに寝られてない俺の、都合のいい夢・・・。

「好き、だったよ・・・?ちょっと気が付き始めてた・・・でも、その矢先あの・・・マックで・・・あぁなって・・・彼女が居るって知ってたのに未練が、
まだある自分とか・・・思ったら、桃と居て好きかもって思った自分の気持ち・・・は、忘れたいだけなんじゃないかって・・・
そう思ったら、すごい自分サイテーって思って・・・」
「・・・で、あの<ごめん>?」
「うん・・・」

ちゃんが、俺の体に腕を回してきた。
・・・心臓が・・・ヤベー・・・この前とか別の感覚でドキドキしてて・・・

「でも、違った・・・話せなくて、辛かった。勉強も手に付かなくて・・・眠れなくて・・・本当に桃の事好きだったんだって、わかった・・・」
「・・・・・・」
「だから、もう手遅れでも自分の気持ちだけは今度こそ伝えないとって、思った」
ちゃ・・・」
「好き、桃が・・・好き」

もう、いいよな?
心臓の音聞こえたら俺また格好悪いとか思ったけど・・・格好悪いとか、もう今更だよな・・・。

「俺も、が好きだ」






を家まで送ってから俺も帰って、今日はなんだかいつもより夕飯が食えそうな気がした。
んで、リビングに入って・・・テレビ付けようとして、ビビった。

「お袋・・・なんでテレビの上にぬいぐるみが置いてあんだよ・・・?」

台所で鼻歌歌ってた母親が、軽くターンしてこっちを向いたかと思うと・・・

「だって、いらないんでしょ???かわいいからもらっちゃったー♪」

勿論、返してもらった。
俺の気持ちは、また俺の手元に戻ってきて・・・捨てたと思ったら戻ってくるなんて、
本当、マジでこのぬいぐるみって俺の気持ちそのまんまじゃねーか。




終わり







20100401:ちょっと改訂