文化祭、それは普段勉強・部活に励む生徒達のお祭り。
ともすれば、いろんな事件が起こるのは必然であって・・・。
+JUNGLING PARTY+
「え、それ本当ー?!」
「オウ!に嘘吐いてどーすんだよ」
昼休みに一年の時同じクラスだった仲のいい桃が話しかけてきて呼び出された。
まだ少し寒い位の屋上まで連れて来られて、何かと思ったら・・・・
「文化祭のテニス部の出し物はソレに決まり。部費に売り上げ足す為にうちのマネが無理矢理決めたんだよ」
嫌そうに言う桃が伝えてきた内容は
<文化祭のテニス部の出し物はダブルス戦、相手に勝てば一つだけお願いを聞いてもらえる。>
だった。
「一人につき一日一回だけ参加OKで、相手も自分で選べるから負けても異議なし。」
「へぇ〜〜〜・・・ダブルスじゃないといけないんだよね?」
「ああ。で、試合は1ゲームのみ」
「むむぅ・・・」
そのダブルス戦、すごく難しい事だけど勝てば・・・もし勝てたら、
海堂に放課後デートしてもらう事も出来るんだよね・・・。
でも、運動は苦手なんだよなぁ・・・でもでも、海堂と一緒に帰ってみたいなぁ・・・。
・・・海堂と放課後デート・・・。
でもでも、テニス経験のある友達なんかも私にはいな・・・あ、一人だけいるか、今私の目の前にいる桃が。
「桃は客の相手しないといけないんだよね?」
「あぁ・・・でも休み時間あるからな。海堂を倒す時間位はあるぜ?」
桃はニヤっと笑いながらこっちをジっと見てきた。
「本当ー?!協力してくれるの???」
「なぁに、放課後のラーメン一杯でいいぜ?」
「うんうん!よーし!!ヨロシク、相棒!」
右手を差し出して、握手。
勝てるかもしれない・・・かもしれない。
「にしても、そこまでマムシに惚れられるのが不思議だよなぁ。・・・ま、面白いモンが見られそうだしいっか!」
そして誰も知らない所で急造コンビが出来上がったのである。
「ところで、お前テニス出来んの?」
「全然。」
文化祭まであと二週間。
テニス歴0日の私は、桃の知るストリートのテニスコートで一から教わっていた。
そこには桃の知り合いらしい他校の人が数人居て、中でも橘杏ちゃんという子は良くしてくれた。
一度、杏ちゃんに桃の彼女だと思われていた事を知って大笑いして否定したら、周りに居た玉林中の人とか
びっくりしてたっけ。なんでだろう?確かに仲はいいけど・・・。
なんでそう思ったの?って後から杏ちゃんに聞いたけど、苦笑して教えてはくれなかった。
そして、肝心のテニスはと言えば、トロい私はボールに触れなくて、桃にはラーメン一杯じゃ足りない位世話になってる・・・
でも、桃のおかげで段々ボールをラケットに当てられて、打ち返せるようになって・・・体動かす事っていうかテニスって、
以外と楽しいのかも、なんて・・・。
「、もう少し脇締めて振り抜いてみ?」
「ウィッス!!」
「・・・お前男らしいな」
そして段々と文化祭の日が近くなっていくに連れて自分のクラスの出し物の準備も忙しくなって・・・テニスの修行もなかなか
ままならなくなり、ストリートのテニスコートに行く機会が少なくなってちょっと寂しさを感じ始めた文化祭当日。
「いらっさいませ〜」
忙しい。
なんで喫茶店がこんなに忙しいのだ・・・。
服は全員揃いで、なんて出来ないのでみんなで記念にとクラスと喫茶店の名前を
ロゴ入れしたTシャツを作って、それを着た。
ジュースはペットの中身を移しただけだし、ケーキだけはみんなで家庭科室で作ったけど紙コップに紙皿で
オシャレのかけらもないお粗末な物だ。凝ったのは・・・店内の装飾位。
なのに、なんで・・・こんなに忙しいんだー!!・・・これじゃテニス部の様子も見に行けないよぅ・・・。
文化祭は2日間。
2日共学校内は開放されて、他校生も沢山来る。日曜である明日の方がテニス部が忙しくて挑戦出来無さそ
うなのは目に見えているのでやっぱり今日中に挑戦したい。
そして、あれよあれよという間に気づけばもうもう12時半。
「ありがとうございましたー」
形だけの挨拶をしてドアを見ると、海堂が戻ってきていた。
「海堂、お疲れさま。お昼?」
「ああ。」
「テニス部も忙しい?」
「ああ。」
海堂疲れてそうなのに・・・格好いいなぁ。
「」
「っは、はい?」
うあぁ、めずらしく名前呼ばれてしまったよ!
見ると、相変わらず無表情なんだか怒ってるんだかの顔で、でも目はまっすぐ私を見ていた。
「・・・手伝えなくて悪い」
「あ〜大丈夫だよ!海堂も部活が忙しいんだしさ〜?賞品が賞品だけに大盛況でしょ?
・・・あ、やっぱ不二先輩とか指名多いの?」
聞いた瞬間、海堂の眉間にシワがよった。
「あぁ。」
「やっぱりねー、大変そうだなぁ」
私はいつもの事と話続ける。
と、海堂はお昼休憩なのに気がついた。
「あ、海堂昼食べに来たんだった!」
「ああ。」
「ケーキ食う?」
「・・・いいのか?」
「いいよ〜」
バックヤードと呼ぶにはこれまたお粗末な黒板の下で、弁当広げた海堂に私は甘さ控えめのシフォンケーキを渡す。
「・・・どうも」
「どういたしまして」
さりげなく私が作ったのを渡してしまった。フフフ。
「テニス部かー・・・あ、あとで行くからね」
「・・・が?」
「うん。挑戦状持って」
「・・・・・・」
挑戦状って言うと果たし合いみたいでなんか格好いいなぁ・・・と、見るとまた店内(教室内)が混み始めて
いた。
「さて、行くか〜!海堂、ごゆっくり〜」
それだけ言って私はその場を離れた。
そしてまた一段落してバックに戻ると、そこにもう海堂の姿はなくって。
いつもの海堂だったら、<ごちそうさん>とか<サンキュ・・・>とか言って行く気がする。
ケーキが乗っていた紙皿も残さず、義理堅い海堂らしくなく、お礼も残さないで海堂はコートに戻って行った。
なんか・・・海堂らしくないっていうか・・・そんなに忙しいのかな?・・・はっ!!実は嫌われてたりして!?
他の女子よりは近づいた気でいた。間違いだったのかな・・・?さっきまで話せて、嬉しかったのに。
「、居るー?」
誰かに呼ばれて振り向くと、桃だった。
「俺、休憩。今マムシ戻ってきて手ぇ空いてるけど行けるか?」
「あ、うん」
そうだ、行かないと・・・。
なんかすっかりやる気が萎えてしまったけれど、ここで辞めるのは余りにも簡単だもんね!
山は、昇る為にあるのだ!!
テニスコートは、女の子だらけだった。
「・・・今日ずっとこんなん?」
「ああ。さっきはもっと山のように居たけどな」
女って・・・いや、恋する乙女って恐ろしい・・・って私もか。
「まず、うちの美人マネの居る受付へ」
「あ、うん」
桃に促されて見ると、髪の長い確かに美人な女の先輩がダルそうに座っていた。
「あれ?桃、アンタ休憩でしょ?」
「うっす。ダブルスしに来ました」
「・・・彼女?」
「友達ッス」
どうも桃といると彼女に見られるなぁ・・・まぁ、確かに桃は優しいし彼女いない方がありえないよね。
でも、みんなそんなに私を彼女に間違って、桃の彼女が私なんかでいいわけないのにねぇ?
桃に受付は任せて、コートに目をやると海堂は審判をしていた。
試合は菊丸先輩と帽子を被った、一年生の男の子ペア。相手は見た事ある女子だった。
海堂こっち見ないかなーと思った時、なぜか本当に目があってしまった。
どどど、どうするっ!?手、手振ろうか!!
手を上げようとした。
手を上げかけて・・・やめた。
海堂が目をそらしたから。
まるで、何も見なかったかのように。
ケーキ・・・そんなにまずかったのかな?・・・それともさっきの会話で私何か悪い事言ったのかな・・・?
挑戦心も鈍るよ、これは。
「?」
「あ、はい?」
桃に肩を叩かれて振り返ると、カードを渡された。
「マムシが審判終わったら、そのままコートでやっていいってよ」
「あ、うん、ありがとう」
「・・・どうした?」
するどい桃。
「キンチョーしてきた」
適当に誤魔化す私。
本当いい友達を持ったよあたしは。でも、弱音は言えない。
これまで付き合わせてきた桃にも失礼だし、おおざっぱで不器用な私に出来る限りの事を、このチャンスで
後悔しないように頑張りたいから。
「俺が居るし、だーいじょうぶだって!」
その時私に向けたセリフと共に、ニカっと笑った桃の肩を小さめの白い手が叩いた。
「来ちゃった☆2人共、これから???」
「橘妹!」
「杏ちゃん!!」
「ちゃん、見に来たよ〜♪」
オ〜と軽く抱き合えるのが女の特権。
海堂の事は教えてないにしても、まさかチラっと話した程度で来てくれると思わなかったからすごい嬉しい!!
「ちょうどこれからだよ!終わったらちょっと話そうよ!!」
「うん!応援してるね☆・・・桃城クン、足引っ張っちゃ駄目よ?」
「うるせーよ」
三人で笑い合う。
そこへ、呼ばれる声がした。
「桃城、ペアー」
「ほーい」
桃と私は顔を見合わせて、笑う。
「行くか」
「おうよ!!」
気になる海堂の態度。でもそんなの、気のせいかもしれないし、今は目の前の試合をする!
ただ、それだけ!!
「ところで、海堂のペアは誰なの???確か、特に指定が無い場合ってクジで決めるんだったよね?」
「・・・ご、ごめん、・・・」
「ん?」
・・・なんか嫌な予感が・・・
「乾先輩だったりして☆」
「ギャフン!!」
海堂が待つコートに項垂れつつ向かう・・・だって、正規のペアじゃんよー!!こんなんアリ!?
どっちのクジ運が悪いのか・・・?
と、肩に手が。
「桃?」
「折角一回キリなんだし、楽しんでやろうぜ?後の事は考えんな!!
駄目だったら俺がお前をもらってやっからよ☆」
桃の優しさが目に滲みるぜ・・・くぅぅぅっ!!
「そうだね!楽しんでやろー!!」
片手を上げて、気合い入れ。
ピッと笛が鳴る。
桃のサーブで始まって、受けるのは乾先輩。
あっ!来た!!来たよー!!
少し緩めに戻ってきた打球を返す。うん、これ位なら!
海堂の所に届いた私の愛入りの打球は・・・
「フンっ!」
ぎゅおって・・・
スネイクー・・・
もちろん、いきなり全力で返ってきた玉は取れなく・・・
「か、海堂クン・・・全力ですか?」
「・・・・・・」
フシューって言ってる・・・
「馬鹿じゃねーの」
・・・ゲフン
見ると海堂が発した言葉だとわかった・・・そんなに私の事キライー?!あぁ・・・涙が・・・
結局、桃が一回ダンクスマッシュでポイントを返してはくれたけど、ざ・ん・ぱ・い。
「うぅ・・・ごめんね、桃」
「あ?いーよいーよ」
「私が不甲斐ないばかりに・・・」
フゥと上からため息。
「あのコンビに勝てたらお前ウチのレギュラーになれるんだぜ?それは色々困る!」
「なにそれ?」
「頑張ったのに落ち込んでちゃいけねーな、いけねーよ」
桃なりの励まし。
私は、笑わないと駄目だね。
「うん、色々ありがとうね!!」
「おう!」
でも、やっぱり色々ショックなのよ・・・
「ちょっとジュース買ってくるー」
「おー」
ジュースを買ったがいいが、コートに戻る気になれず校舎裏の花壇の縁に座る。
色々考えちゃうよね、なんであんなに嫌われたんだろう、とか。凹むよ普通に。
今日は海堂がキツイ。反対に桃が優しくて、惹かれそうになってしまうよ・・・。
たった一ゲームの本番が終わって緊張が解けて、ちょっと頭の中がゴチャゴチャ気味になっている。
と、後ろに人がいる気配。
振り向くと・・・
→杏ちゃんがいた
→桃がいた